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先日、小学4年生の長女が学校の校庭で友達とボール遊びをしている最中に足首を捻挫して帰ってきた。
「ママ〜、捻挫しちゃったみたいなんだけど…。ちょっと痛いんだよね」
見てもよくわからない。左右を比較してみたら少し腫れている。すぐにアイシングをさせた。するとみるみるうちに腫れてきて私は青ざめてしまった。小学1年生から飛び込みの練習を始めたのだが最近ようやくやる気が出てきたらしく、練習がある日は一日も欠かさず一人で電車に1時間も揺られてプールに通い、なかなか順調にいっていた矢先だった。ちょうどその日に私は「自分から練習に意欲的に行くようになったなあ。このまま風邪をひいたりケガしたりしないで練習してくれたらいいなあ」と思っていた矢先の捻挫だったからそのタイミングに驚いた。
私はこれまで捻挫をしたことがない。昔一度、段差に足をとられて足首がグキッといい「これは絶対に捻挫した」と思ったがまったく腫れず、すぐに痛みも治まったからあれは捻挫ではなかったらしい。だから痛みを知らない。相当痛いと聞くが実際はよくわからない。 主人にテーピングをしてもらい、学校へは2日間ジイジとバアバに送り迎えをしてもらった。くるぶしがブワッと腫れて少し青くなっていた。
そんな状態なのに4日後には「プールに行く!」と言いだした。聞けば体育の授業ですでにマラソンを走っているという。びっくりしたが痛くないらしい。また少し腫れぼったいのに大丈夫らしい。主人も「子どもは治りが早いしな。板は踏めないだろうけど、とりあえずはプールに行かせてみれば?できることがあると思うよ」
結局、練習を4日しか休まずに練習に復帰した。もちろんまだ前のようにバンバンと板を踏むことは避けているが、水に入り陸上トレーニングができるだけでずいぶん違う。自分の子供ながらたくましさに驚き嬉しかった。きっとこれは隔世遺伝で金戸バアバに似たのだと思った。義母は骨折していてもプール練習を休まなかったそうだ。
今月は、自分の子供の自慢話をしたいのではない。ケガをしたときにもできる練習はあるのだということが言いたかったのだ。私は幸いにも選手時代に大きなケガや故障をしなかった。そんな中、一度手首の腱鞘炎になったことがあった。ちょうど1988年のソウル五輪の前年、日本選手権の2週間半前のこと。この大会の結果でソウル五輪の候補選手を選出するという大切な大会の前なのにどうしても手首が痛くて飛び込めなくなってしまった。その時コーチに言われたことは「頭から入水できなくてもほかにやれることはたくさんあるはず。できることをやりつくそう」という言葉だった。そこでプールでは足から入る練習をし、陸上ではトレーニングに加えて自分の演技種目をすべてマットの上で動きを反復し、体と頭にいいイメージを焼き付けた。やれることを100パーセントやりつくすと実際に頭からの入水はしなくとも毎日ぐったりと全身疲労した。手首をテーピングでぐるぐる巻きにし、頭からの入水を解禁したのは大会の3日前、一日30本までと本数を制限して練習した。このときのうれしかった気持ちは今でも忘れられない。普通に練習できる喜びが体中いっぱいだった。そして大会では予想以上の成績をあげることができた。
コーチをするようになって選手のそういう場面に何度か遭遇した。うちのチームのY選手は足の故障で半年くらいジャンプを禁じられてしまった。それでも練習に通ってくる選手。仕方がないのでやれることをしようねと入水ばかりを繰り返した。そうしたら全くノースプラッシュと無縁だったのに皆が振り向くほどのノースプラッシュができるようになった。また最近では、これまたうちのチームの選手だが、手首を骨折し手術を受けたS選手はずいぶん練習に苦労した。腰の骨を移植したのでしばらく歩けなかったくらいだ。それでもプールに通い、足から入る練習を山のようにこなした。それまで時間をかけられなかった板踏みの細かい動きを修正し、それはしつこく練習を繰り返した。同じことしかやれない練習が続くと心が折れそうになるがそれでも毎日通ってきた。こうして最近になって半年ぶりに3m飛び板の種目を解禁できるまでに回復した。 その日の練習を見ただけで私は胸が熱くなった。確実に昨年とは変わった。世界のトップ選手と互角に張り合えるくらいに板が踏めるようになった。彼女の107Bを見たときに思わず主人と顔を見合わせ同時に言葉が出た。「骨折してよかったね!」と。
今夏、北京五輪にテレビ解説の仕事で参加させてもらい、世界中の選手らの資料と格闘した。ケガを乗り越え、手術までした選手がたくさんいた。とくにトップの選手に多かった。皆ケガや故障を乗り越えて大舞台に立っていた。きっと故障で十分なプール練習ができなかったであろう時期にもさまざまな練習やトレーニングをこなしてきたに違いない。
主人はよくこう言う。「選手はケガしたときにそれでも練習に通うことでグンと上達するんだ」と。今回はこの言葉が胸にしみた。
全国でケガや故障で苦しんでいる人がいたら、どうぞ心を倒さずに「これは自分がもっと伸びるためのチャンス!」と気持ちを切り替えてやれることをやりつくす練習に取り組んでもらいたいと思います。必ずや先に光が見えてくるはずです!
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